【NICU助産師監修】妊娠中から産後の乳房と乳汁の変化【母乳育児】

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この記事を読んでわかること

妊娠前~産褥3~4か月の乳房・乳汁の変化

産褥経過に応じた乳房・乳汁の変化をイメージすることができる

前提

「母乳育児を頑張りたいと思っている」

「母乳育児のメリットをもっともっと知りたい」

「ちょっと理系に母乳育児を知りたい」

母乳について知りたい、看護学生さんや助産学生さん

母性実習や助産実習の事前学習、予習や復習

産婦人科、NICU勤務の看護師さんへ向けた発信内容となっています。

乳房と乳汁の変化

母乳分泌は5段階に分けられる。

乳腺発育期 妊娠初期~中期

乳頭が突出し、乳輪が着色してモントゴメリー腺がおおきくなる。

エストロゲン

主に乳管系の増殖と分化を促す。

プロゲステロン

腺房や小葉の発育を促す。

プロラクチン

乳頭の発育、小葉-腺房の発達に関与。

プロゲステロンとプロラクチンが妊娠中の腺房発達の鍵となる。

このほかにhPL、ACTH、成長ホルモンが関与する。

多くの女性は妊娠中に乳房が大きくなるが、個人差があり、産後に大きくなる場合もある。

乳汁生成Ⅰ期 妊娠中期~産後2日目まで

乳腺が乳汁を分泌し始める。

乳汁産生の開始には、高濃度の血中プロラクチン、インスリンとコルチゾールが関与し、腺房細胞が分泌細胞に分化して乳房のサイズも大きくなる。

妊娠16週ごろ

腺房細胞からの分泌が始まり、腺房腔に初乳や脂肪滴がみられるようになる。

妊娠後期

血中プロラクチン濃度が高まり乳汁産生の準備が整うが、多量のプロゲステロンなどの働きにより乳汁は本格的には分泌されない。

脂肪球が乳腺細胞内に蓄積するようになり、母親の血液中の乳糖とαラクトアルブミンの濃度が上昇する。

ごく少量の乳汁が分泌されることもある。

初乳の分泌

生まれてすぐに生きるための感染防御因子と抗酸化物質を得る

初乳にはNa、Cl、免疫グロブリンやラクトフェリンなどの感染防御因子、ビタミンAやビタミンEなどの抗酸化物質を多く含みます。

つまり、児は無菌で酸素分圧が低い子宮内から、病原体が周囲にたくさんいて酸素もたくさんある子宮外に出てくるため、まず生きていくために大切な感染防御物質と抗酸化物質を得るわけである。

エネルギーと脂肪を蓄えて生まれてくる赤ちゃん

この時期に含まれるカゼインはわずかで、脂肪や乳糖の濃度も低いため栄養価としては高くない。

ヒトの胎児は生後数日間にエネルギーとして使うための脂肪を妊娠後期に蓄積している。

児は弁当と水筒をあらかじめ持って生まれてくるため、十分な栄養と水分補給は児が子宮外の環境に適応できてからでもよいということになる。

乳汁生成Ⅱ期 分娩後3~8日ごろ

乳汁生成Ⅱ期の開始

分娩時に胎盤が娩出されることでプロゲステロン、エストロゲン、hPLの母体血中濃度が急激に低下し、抑制されていたプロラクチンが作用し始まる。

乳汁生成Ⅱ期はホルモンの変化によって開始される。

乳汁来潮から乳汁分泌まで

この時期は乳汁来朝から乳汁分泌が確立するまでの時期をいい、分娩後3~8日くらいを示す。

乳汁分泌は通常、分娩後36~96時間くらいで著明に増加し始めその後一定となる。

初産婦ではほぼ半数が産後49~72時間に乳汁来朝を認める。

プロゲステロンの急激な低下が乳汁生成Ⅱ期開始の引き金になるが、乳汁分泌が確立されるためにはプロラクチン、コルチゾール、インスリンなどの作用も必要である。

母乳成分の変化

産後4日目までに初乳が移行乳に代わり、産後8~10日目ごろには成乳になる。

産後2日目以降は乳汁中のNa、Cl、蛋白質の濃度が低下し、乳糖と乳脂肪の濃度が上昇する。この変化は乳腺房の細胞間隙が閉じることにつながる。

乳腺細胞の間隙が密着結合によって閉じられることで乳腺腔内に分泌された乳糖は乳腺腔内にとどまるようになる。

乳腺腔内の乳糖濃度上昇は浸透圧を上昇させ、水分を乳腺腔内に引き込むための乳汁産生量が増加する。

産後早期、頻回授乳が母乳育児成功のカギ!

乳汁生成Ⅰ期の初乳分泌と同様に、児の吸啜刺激がなく乳房から乳汁が取り除かれなくても乳汁分泌は開始される。

産後早期に頻回授乳をすると吸啜刺激が乳腺のプロラクチン受容体の発現を促し、母乳産生がより早く増加する。

出産直後から十分に授乳していれば乳房は軽く充満する程度で、母乳分泌量は日を追うごとに増加してくる。

産後早期の病的緊満

乳房から新生児が効果的に母乳を飲みとっていない場合には腫脹・痛み・熱感を伴った乳房の緊満(病的緊満)が生じて直接授乳が難しくなる。

悪化すると乳腺炎になることもある。

頻回授乳はもちろん適切なラッチオンはできているか、授乳姿勢などの確認も必要。

児の哺乳意欲はあるか、筋緊張や高口蓋の有無、口腔内の奇形など再度確認してみよう。

産後プロラクチン濃度の変化

この時期に授乳または搾乳をしないと1週間でプロラクチンは非妊時の値まで低下し、乳汁は初乳のようになり数日間で分泌が停止することもある。

出産直後から1~2週間は効果的な吸啜または搾乳により初乳・移行乳を確実に乳房から取り出し乳房の病的緊満を予防すると同時に乳汁分泌を確立することがきわめて重要である。

重要

8回/日以上の頻回授乳が血中のプロラクチン濃度を下げない

特に夜間はプロラクチン濃度高いため頻回授乳を行うことで母乳分泌量は増加する

乳汁生成Ⅲ期 分娩後約9日以降~退縮期に至るまで

需要-供給バランスシステム

乳汁産生量は母親の乳房の産生能力より児が飲みとった量によって決まる。

産後継続的に授乳を続けていても、血中プロラクチンの基礎値は出産後から徐々に下がる。

新生児が乳首を吸啜するなどの乳頭への刺激によって一時的に血中プロラクチン濃度が上がり、母乳が分泌される。

短期的な乳汁産生は頻回に授乳することでより多くの乳汁が産生される。

退縮期 離乳の開始

乳蛋白、Cl、Naの濃度が上昇。

分泌量が400ml/日以下になると乳糖の濃度が低下する。

卒乳、断乳 授乳終了後

腺房細胞に退行性変化がおきる。

多くが細胞死を迎え乳腺組織が減少する。

乳汁分泌の調整メカニズム

乳汁分泌の調整には2つのメカニズムがある。

エンドクリンコントロール

腺房上皮細胞で乳汁産生が調整されることで、乳汁生成Ⅱ期はエンドクリンコントロールによって開始される。

胎盤娩出

血中プロゲステロンの急激な低下に伴うプロラクチン作用の発現。

TSH、コルチゾールとインスリン、プロラクチン抑制因子、オキシトシンなどのホルモンの作用が関連している。

吸啜刺激

脊髄経由で脳に伝達され視床下部のプロラクチン抑制因子を抑制することにより、下垂体前葉からのプロラクチン分泌が促される。

プロラクチンが腺房細胞での乳汁産生を促すと同時に下垂体後葉から分泌されたオキシトシンは腺房を網目状に取り囲んでいる筋上皮細胞を収縮させ、射乳反射を起こさせる。

オートクリンコントロール

細胞が自分自身の作り出したシグナルに応答する、腺房細胞内の局所的な調整のことである。

母乳を産生する母親の能力ではなく新生児の食欲や吸啜の量と質、または乳汁がどれだけ取り出されるかが乳房の乳汁産生を決定している。

新生児は1回の授乳で乳房にある母乳の約76%を飲みとるが、授乳後に乳房内に残った量によって乳汁産生量が調整される。

腺房腔に母乳が残るほど母乳が作られなくなり、逆に新生児が1回の授乳でたくさんの母乳を飲み取って腺房腔が空になるほどより多くの母乳が作られる。

乳房に母乳が残ると、腺房細胞から分泌されている乳汁産生抑制因子というホエイ蛋白の濃度が上昇し、乳糖とカゼインの産生を抑制する。

これらの濃度は乳房の充満程度と関連し、乳腺細胞の基底膜にあるプロラクチン受容体を抑制し、さらに乳汁産生が低下すると考えられている。

左右の乳房は独立して調整される。

母乳分泌に欠かせないホルモン

プロラクチン、オキシトシン、TSH、コルチゾール、インスリン

プロラクチン

乳汁分泌の開始と維持に必須ホルモン。

血中プロラクチン濃度は分娩直後に最高値を示す。

産後1週間で授乳している女性の血中プロラクチン濃度は分娩直後の約50%にまで低下するが、吸啜により上昇する。

産後22~26日ごろでは授乳の開始から45分でピークになり血中濃度が2倍にある。

その後はゆっくりと低下するが、何年でも授乳している限り吸啜により一過性に上昇する。

授乳してないと産後7日間で非妊時レベルに低下する。

プロラクチンには日内変動があり、夜間に値が高い。

授乳回数が多い方が血中プロラクチン濃度が高く、24時間に8回以上授乳していると次の授乳までに濃度が低下するのを防げる。

プロラクチンはオキシトシンとは異なり、新生児との接触によっては上昇しない。

オキシトシン

吸啜刺激に反応して下垂体後葉からパルス状に放出し腺房周囲の筋上皮細胞に作用して収縮させる。

腺房腔内から乳管に乳汁を押し出して射乳反射を起こさせる。

授乳を開始すると1分以内に血中濃度が上昇し、授乳をやめると6分以内に基礎値に戻る。オキシトシンの放出は授乳を続ける限り持続してみられる。

オキシトシンは末梢の血管床を広げることで血圧を低下させながら血流を増加させる作用がある。そのため、授乳中は皮膚温が上昇する。

オキシトシン分泌 促進と抑制

オキシトシンは吸啜という直接の刺激だけでなく、母親が子どもと肌を触れ合わせたり、子どものことを考えたり、泣き声を聞いたり、子どものにおいを嗅いだりするだけでも射乳反射を起こさせる。

母親が強い痛み、羞恥心、不安を感じるとオキシトシン分泌は抑制される。

愛着形成に重要な物質

オキシトシンはホルモンとしてだけでなく神経伝達物質としても働き、鎮痛作用、愛着行動促進作用、痛みの閾値を上げる作用などがある。

TSH

乳腺の成長と分泌に関与。

コルチゾール、インスリン

プロラクチンが作用する以前に腺房上皮細胞に作用し、成熟した乳汁分泌細胞に最終的に分化するのを助ける。

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